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日本語・現代文・国語 - タイトルのとおり、ディオニス王は「実はいい人」だというテーマでディベートをします。私は肯定側の立論をしなくちゃいけないんですが、難しくてわかりません。原稿用紙3枚 …
このような参勤交代という制度により、将軍と大名は強く結びついていました。正確にいうと、「大名は将軍に服従していますよ」ということを表していたのです。したがって、参勤交代をしないという選択肢はあり得ないもので、もし拒否したら、幕府に反逆しているとみなされたそう。きっと、参勤交代の命令には従順に従い、江戸の暮らしをできる限り満喫するのが、賢い選択だったのでしょう。パッケージは東京バナナらしい可愛らしいデザインでプレゼントにピッタリ、キットカットのチョコ表面にも東京ばな奈のイラストがあしらわれています。アッパー全面に描かれるのは虎!このスニーカーの名称にもある「スーベニアジャケット」とはいわゆるスカジャン。そのスカジャンでよく使われている虎柄を、日本の伝統織物「西陣織」で表現しています。ザクロのような深い赤色のボトルは、富山県の伝統工芸の一つである特殊な塗装技術を用いた、日本のクラフトマンシップにあふれた芸術的な逸品です。隈取の上でキラキラと煌くクリスタルは、真正のスワロフスキー®・クリスタルを100%使用しており、認定証のタグ付きです。今回はそんな5区を走り、「山の神」と呼ばれた名選手たちに注目してみました!「最近の若者は日本語が乱れている!」とお叱りの声が聞こえてきそうですね。しかしこの現象は、単純に日本語の乱れや言い間違いとあっさり切り捨てることができるものではなく、実はある言語学的な法則によるものなのです。この法則を「音位転換」と呼びます。ハイカットの「ALL STAR 100 SOUVENIRJACKET HI」、ローカットの「ALL STAR 100 SOUVENIRJACKET OX」は共には¥11,880 (税込)で11月中旬発売予定。後に、江戸に出てきた藩主のために屋敷地を建築し、住まわせます。大名は、江戸と地方とを1年おきに往来し、江戸の屋敷地では正室と子どもが暮らしており、国元の居城には側室を置いていました。 太宰治の『走れメロス』は、正義を貫く青年メロス、友人セリヌンティウス、暴君ディオニスと言った人物が織り成す短編小説で、今も多くの人に爽やかな感動を与えています。しかし、その元ネタと 「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰ってきた。約束のとおり、今、帰ってきた。」と大声で刑場の群衆に向かって叫んだつもりであったが、喉がつぶれてしわがれた声がかすかに出たばかり、群衆は、一人として彼の到着に気がつかない。すでにはりつけの柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々につり上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆をかき分け、かき分け、花婿はもみ手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈して、宴席から立ち去り、羊小屋に潜り込んで、死んだように深く眠った。メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。今日未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里離れたこのシラクスの町にやってきた。メロスには父も、母もない。女房もない。十六の、内気な妹と二人暮らしだ。この妹は、村のある律儀な一牧人を、近々、花婿として迎えることになっていた。結婚式も間近なのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣装やら祝宴のごちそうやらを買いに、はるばる町にやってきたのだ。まず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今はこのシラクスの町で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく会わなかったのだから、訪ねていくのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、町の様子を怪しく思った。ひっそりしている。もうすでに日も落ちて、町の暗いのはあたりまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりではなく、町全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になってきた。道で会った若い衆を捕まえて、何かあったのか、二年前にこの町に来たときは、夜でも皆が歌を歌って、町はにぎやかであったはずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に会い、今度はもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺の体を揺すぶって質問を重ねた。老爺は、辺りをはばかる低声で、僅か答えた。「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私欲のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落ち着いてつぶやき、ほっとため息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」私は、今宵、殺される。殺されるために走るのだ。身代わりの友を救うために走るのだ。王の奸佞邪知を打ち破るために走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若いときから名誉を守れ。さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。幾度か、立ち止まりそうになった。えい、えいと大声あげて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨もやみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなってきた。メロスは額の汗を拳で払い、ここまで来ればだいじょうぶ、もはや故郷への未練はない。妹たちは、きっとよい夫婦になるだろう。私には、今、なんの気がかりもないはずだ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要もない。ゆっくり歩こう、ともちまえののんきさを取り返し、好きな小歌をいい声で歌いだした。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降ってわいた災難、メロスの足は、はたと、止まった。見よ、前方の川を。昨日の豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流とうとうと下流に集まり、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、こっぱみじんに橋桁をはね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺め回し、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟は残らず波にさらわれて影なく、渡し守の姿も見えない。流れはいよいよ、膨れあがり、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を上げて哀願した。「ああ、鎮めたまえ、荒れくるう流れを! 時は刻々に過ぎていきます。太陽もすでに真昼どきです。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことができなかったら、あのよい友達が、私のために死ぬのです。」今回は「走れメロス」の原作と言われているシラーの「人質」を紹介したいと思います。 *全文は私の判断で中学生用に少し言葉を簡単に言い...「はい、初めは王様の妹婿様を。それから、ご自身のお世継ぎを。それから、妹様を。それから、妹様のお子様を。それから、皇后様を。それから、賢臣のアレキス様を。」一人の少女が、緋のマントをメロスにささげた。メロスは、まごついた。よき友は、気をきかせて教えてやった。今回は、とある記事を紹介します。 ヤフーのスポーツニュースで取り上げられていましたが、とても子ども達に考えてもらいたいと思う記事でしたので...「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精いっぱいに叫びながら、ついにはりつけ台に上り、つり上げられてゆく友の両足に、かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。許せ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。「そうです。帰ってくるのです。」メロスは必死で言いはった。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許してください。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この町にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いていこう。私が逃げてしまって、三日めの日暮れまで、ここに帰ってこなかったら、あの友人を絞め殺してください。頼む、そうしてください。」「セリヌンティウス。」メロスは目に涙を浮かべて言った。「私を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。きみがもし私を殴ってくれなかったら、私はきみと抱擁する資格さえないのだ。殴れ。」「なんでもない。」メロスは無理に笑おうと努めた。「町に用事を残してきた。またすぐ町に行かなければならぬ。明日、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずることができぬ、というのです。この頃は、臣下の心をも、お疑いになり、少しくはでな暮らしをしている者には、人質一人ずつ差し出すことを命じております。ご命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。今日は、六人殺されました。」「やめてください。走るのは、やめてください。今はご自分のお命が大事です。あのかたは、あなたを信じておりました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあのかたをからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念をもち続けている様子でございました。」「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニスの面前で、よき友とよき友は、二年ぶりで相会うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言でうなずき、メロスをひしと抱き締めた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。「メロス、きみは、真っ裸じゃないか。早くそのマントを着るがいい。このかわいい娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく悔しいのだ。」「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらときみを疑った。生まれて、初めてきみを疑った。きみが私を殴ってくれなければ、私はきみと抱擁できない。」「いや、まだ日は沈まぬ。」メロスは胸の張りさける思いで、赤く大きい夕日ばかりを見つめていた。走るよりほかはない。セリヌンティウスは、全てを察した様子でうなずき、刑場いっぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しくほほえみ、「おまえらの望みはかなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっと御免こうむって眠りたい。目が覚めたら、すぐに町に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しいことはない。おまえの兄の、いちばん嫌いなものは、人を疑うことと、それから、うそをつくことだ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でもつくってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りをもっていろ。」「ああ、王はりこうだ。うぬぼれているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟でいるのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落とし瞬時ためらい、「ただ、私に情けをかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えてください。たった一人の妹に、亭主をもたせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰ってきます。」「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑っておられる。」メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城に入っていった。たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出てきたので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔のささやきは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬことができるぞ。ああ、日が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生まれたときから正直な男であった。正直な男のままにして死なせてください。「黙れ。」王は、さっと顔を上げて報いた。「口では、どんな清らかなことでも言える。わしには、人のはらわたの奥底が見えすいてならぬ。おまえだって、今に、はりつけになってから、泣いてわびたって聞かぬぞ。」「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心をもってはおりませぬ。」群衆の中からも、歔欷の声が聞こえた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人のさまを、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔を赤らめて、こう言った。山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り上げた。メロスはひょいと、体を折り曲げ、飛鳥のごとく身近の一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「おまえがか?」王は、憫笑した。「しかたのないやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」「ばかな。」と暴君は、しわがれた声で低く笑った。「とんでもないうそを言うわい。逃がした小鳥が帰ってくるというのか。」「私には命のほかには何もない。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」目が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらにはまだなんの支度もできていない、ぶどうの季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことはできぬ、どうか明日にしてくれたまえ、とさらに押して頼んだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論を続けて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓がすんだ頃、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降りだし、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、なにか不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持ちを引き立て、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのもこらえ、陽気に歌を歌い、手を打った。メロスも、満面に喜色をたたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。このよい人たちと生涯暮らしていきたいと願ったが、今は、自分の体で、自分のものではない。ままならぬことである。メロスは、わが身にむち打ち、ついに出発を決意した。明日の日没までには、まだ十分の時がある。ちょっとひと眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも長くこの家にぐずぐずとどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものはある。今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳をもって問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間のしわは、刻み込まれたように深かった。メロスは、また、よろよろと歩きだし、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、まもなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。「なんのための平和だ。自分の地位を守るためか。」今度はメロスが嘲笑した。「罪のない人を殺して、なにが平和だ。」「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ。ついてこい! フィロストラトス。」テスト勉強の対策や授業での設問などにご自由に使用してください。 走れメロス Run, Melos, Run (ラダーシリーズ Lev...「ちょうど今、あのかたが死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。お恨み申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」濁流は、メロスの叫びをせせら笑うごとく、ますます激しく躍りくるう。波は波をのみ、巻き、あおり立て、そうして時は、刻一刻と消えていく。今はメロスも覚悟した。泳ぎきるよりほかにない。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、今こそ発揮してみせる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れくるう波を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきとかき分けかき分け、獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍を垂れてくれた。押し流されつつも、みごと、対岸の樹木の幹に、すがりつくことができたのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先を急いだ。一刻といえども、無駄にはできない。日はすでに西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠を登り、登りきって、ほっとしたとき、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。道行く人を押しのけ、跳ね飛ばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駆け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴飛ばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も速く走った。一団の旅人とさっとすれ違った瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「今頃は、あの男も、はりつけにかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、今こんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。遅れてはならぬ。愛と誠の力を、今こそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、今は、ほとんど全裸体であった。呼吸もできず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向こうに小さく、シラクスの町の塔楼が見える。塔楼は、夕日を受けてきらきら光っている。「はは。命が大事だったら、遅れてこい。おまえの心は、わかっているぞ。」「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それからうれし泣きにおいおい声を放って泣いた。「支度のないのはお互いさまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何もない。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」「うれしいか。きれいな衣装も買ってきた。さあ、これから行って、村の人たちに知らせてこい。結婚式は、明日だと。」「フィロストラトスでございます。あなたのお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、だめでございます。無駄でございます。走るのは、やめてください。もう、あのかたをお助けになることはできません。」「何をするのだ。私は日の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」目が覚めたのは明くる日の薄明の頃である。メロスは跳ね起き、南無三、寝すごしたか、いや、まだまだだいじょうぶ、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。今日はぜひとも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑ってはりつけの台に上ってやる。メロスは、悠々と身支度を始めた。雨も、幾分小降りになっている様子である。身支度はできた。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢のごとく走り出た。ふと耳に、潺々、水の流れる音が聞こえた。そっと頭をもたげ、息をのんで耳を澄ました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上がって、見ると、岩の裂けめから滾々と、なにか小さくささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手ですくって、ひと口飲んだ。ほうと長いため息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労回復とともに、僅かながら希望が生まれた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、木々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでおわび、などと気のいいことは言っておられぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。今はただその一事だ。走れ! メロス。「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駆け降りたが、さすがに疲労し、おりから午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照ってきて、メロスは幾度となくめまいを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩歩いて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上がることができぬのだ。天を仰いで、悔し泣きに泣きだした。ああ、あ、濁流を泳ぎきり、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天、ここまで突破してきたメロスよ。真の勇者、メロスよ。今、ここで、疲れきって動けなくなるとは情けない。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、希代の不信の人間、まさしく王の思うつぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはやいも虫ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝転がった。身体疲労すれば、精神もともにやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いなふてくされた根性が、心の隅に巣くった。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんもなかった。神も照覧、私は精いっぱいに努めてきたのだ。動けなくなるまで走ってきたのだ。私は不信の徒ではない。ああ、できることなら私の胸を断ち割って、真紅の心臓をお目にかけたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事なときに、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺いた。中途で倒れるのは、初めから何もしないのと同じことだ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定まった運命なのかもしれない。セリヌンティウスよ、許してくれ。きみは、いつでも私を信じた。私もきみを、欺かなかった。私たちは、本当によい友と友であったのだ。一度だって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことはなかった。今だって、きみは私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、セリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世でいちばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。きみを欺くつもりは、みじんもなかった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駆け降りてきたのだ。私だから、できたのだよ。ああ、このうえ、私に望みたもうな。放っておいてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしがない。笑ってくれ。王は私に、ちょっと遅れてこい、と耳打ちした。遅れたら、身代わりを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、遅れていくだろう。王は、独り合点して私を笑い、そうしてこともなく私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切り者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。きみと一緒に死なせてくれ。きみだけは私を信じてくれるにちがいない。いや、それも私の、独りよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き延びてやろうか。村には私の家がある。羊もいる。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すようなことはしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、なにもかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬるかな。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。メロスはその夜、一睡もせず十里の道を急ぎに急いで、村へ到着したのは、明くる日の午前、日はすでに高く昇って、村人たちは野に出て仕事を始めていた。メロスの十六の妹も、今日は兄の代わりに羊群の番をしていた。よろめいて歩いてくる兄の、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。「願いを、きいた。その身代わりを呼ぶがよい。三日めには日没までに帰ってこい。遅れたら、その身代わりを、きっと殺すぞ。ちょっと遅れてくるがいい。おまえの罪は、永遠に許してやろうぞ。」言うにや及ぶ。まだ日は沈まぬ。最後の死力を尽くして、メロスは走った。メロスの頭は、空っぽだ。なにひとつ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力に引きずられて走った。日は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとしたとき、メロスは疾風のごとく刑場に突入した。間に合った。花嫁は、夢見心地でうなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、それを聞いて王は、残虐な気持ちで、そっとほくそ笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰ってこないに決まっている。このうそつきにだまされたふりして、放してやるのもおもしろい。そうして身代わりの男を、三日めに殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代わりの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいうやつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。