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すぐに分かるユニークな点といえば、サビ中盤の2回クラップでしょうか。ライブでやったら楽しそうですが、今のところライブ予定はないそうです。Bメロは特に後半の「あの日 き〜みが〜」と伸ばす部分が素晴らしい。これはおそらく、前半にはギターの印象的なリフでリズムを作っているのに対し、後半ではそれが止んでドラムが前に出てきて、一気にふわっと音が伸びやかに広がるためだと思います。そしてサビはやはり良かった。「こ〜の〜日々を爆破して〜」のように勢いをつけて飛ぶ感じのメロディに、suisさんの美しい高音がとにかく映えています。完全に偏見ですが、はるまきごはんさんの「銀河録」とか好きな人は刺さると思います。このインタビューでは本作の世界観や設定について、「そこまで明かしちゃっていいの!?」というくらいn-bunaさんの口から語られています。今はどうかと言うと、何度も聴いているうちに良さが分かってきた…というか、これでいいのだと自分を錯覚させながら聴いている状態です。おそらくこのサビが好きな人からすれば「これだから良いんでしょ!ここの良さが分からないなんて勿体無い…」という感じでしょうが、こればかりは個々人の感性の問題なので仕方ないですね。※この写真は自分がGW中に行った離島で撮ったものであり、このアルバムとは全く関係ありません。今度は前半からロングトーン「駅前の喧騒〜」や「歌だけがきっと〜」が映えるような控えめなアレンジになっています。「歌だけがきっと〜ま↑だ↑」で高音に跳ねるところも大好きです。また2番のBメロではメロディラインや楽器のアレンジが変わっており、更に好きです。このあと落ちサビに入りますが、そこの最後「今しかない、いなくなれ」の部分がエコーのエフェクトも相まって、ラスサビの最高潮へ思いっきり飛び込んでいく感じがよく出ていて好きです。この曲について書くとしたら自分はこのくらいです。この曲が好みではないということではなく、ほんとに上手く王道に落とし込んでまとめているため特筆すべきことが思いつかないのです。2つめのインスト曲。今度はピアノ以外の楽器も参加して、歌モノのあいだを上手く繋いでいます。『夏草が邪魔をする』の1曲目「夏陰、ピアノを弾く」とボカロの2ndアルバム『月を歩いている』1曲目「モノローグ」を合わせて、ここ最近のアルバムは3作連続でピアノインストを冒頭に持ってきています。本アルバム最後の歌モノ。イントロからこれまでのガツガツした雰囲気とは異なることが分かり、「おや?」と惹き込まれます。先週末に第三弾として投稿された曲です。「靴の花火」以来2作目の実写MVは、n-bunaさんの思い描く夏の感傷的な風景をそのまま具現化したようでした。海沿いの街の線路や踏切、神社の境内や浜辺など…。ロケ地を巡礼したいです。イントロは「劇場愛歌」や「無人駅」系統の、「これぞナブナ!」と言いたくなるギターリフで彩られています。youtubeではn-buna・ヨルシカ史上最速で100万再生を達成し、投稿1ヶ月にして既に約180万回再生されています。この曲自体の良さのほか、ヨルシカの認知度の高まりも大いに影響していると思います。(こうして並べると、n-bunaさんのインスト集が作れそうですね。コアなn-bunaファンはこれらをランダムに流しても一瞬で判別できるのでしょうか。自分には全く自信がありません。)2番でも、Aメロでしれっと逃げ恥を引用してみたり、サビ前にカウントダウンコーラスをいれてみたりと盛りだくさんな1曲。しかし本当に驚くのはここからです。それから2番のサビ後の間奏もとても好きです。2本のギターがいい感じに絡み合い、一度静かに落としてから盛り上げるのに上手く貢献していると思います。本作の歌モノは基本的にサビがとにかく強く、キャッチーさで有無を言わせずに心を鷲掴み!という感じの曲が続いていただけに、あえて最後に対照的なこの曲を配置する戦略は巧みに成功していると思います。そして注目のサビですが、実は自分ははじめ、サビだけがこの曲でそんなに好きではありませんでした。Bメロでさんざんロングトーンが好きと言っておいてなんですが、この全体的に音を伸ばしがちなサビはいまいちしっくり来なかった…それまでが完璧だっただけに残念!と思っていました。この曲の歌詞は基本的に引用の通り、なぜか爆破衝動を抱えるこわい主人公の愚直な心情の吐露、という感じですが、唯一Cメロではふわふわとした雰囲気はサビでも崩れません。盛り上げすぎずに、聴いている人に「いい!」と思わせるサビはそう簡単に実現できるものではありません。普段のn-bunaさんなら転調するだろうな、という部分でもしそうでしない。ストイックに静謐をコントロールしているようです。ここまで明かされてしまうと、ほとんど考察の余地はありませんね。ということで、次の曲からはあまり難しいことは考えずに、聴いた感想を純粋に書いていこうと思います。繰り返される「なんでなんでしょうか」という語呂で、一気に曲に惹き込まれます。ここでもsuisさんは幼めな声質で歌っています。ことごとく最適解を出している…。バス停が各曲の世界観を繋ぐ役割を担っているということは、そこを巡る路線バスに乗ればそれぞれの世界を行き来できるみたいで夢が膨らみますね。どこに行けばそのバスに乗れるのでしょうか。そんなヒット曲「ヒッチコック」は本作の歌モノのなかでは最も独特な曲だと思います。Cメロはともかく、間奏でここまで雰囲気を変える展開はn-bunaさんの曲には珍しいので非常に驚きました。自分がこの曲でもっとも好きな部分はCメロです。『夏草』の記事でも書きましたが、n-bunaさんのCメロには高確率でやられます。本アルバムの歌モノはギターロック要素が前作よりも全面に出ているため、ところどころに入る対照的なインスト曲は、アルバムが冗長になるのを防いでいるように感じます。アルバム自体の輪廻転生観と、それから1年間のうちに夏が来て去って、またやってくるという季節観はスケールの違いがあるにしろ、どこか通ずるところがありそうですよね。「冬眠」というのも実際の冬眠ではなく、もっとスケールの大きい"生まれ変わり"の比喩としての冬眠なのかもしれません。"君"に会える夏にたどり着くための"冬眠"とか。(そう言えば眠っていて意識がないときって、死んでいる状態とあまり変わりませんよね。)ロングトーン気味の部分がしっくりこないだけで、サビ終わりの「僕を全部、全部、全部透過して」の部分はもちろん(?)大好きです。このようなミドルテンポのギターロックはn-bunaさんの十八番で、「夜に染まるまで」「昼青」「メリュー」「靴の花火」など名曲揃いです。「ただ君に晴れ」はこれらのノウハウをほぼ完全に踏襲しながらも、アレンジなどに他の人の手も借りて、更に完成度の高い王道ロックになっていると思います。「バス停」というのはインタビューでも話しているように、本作そして前作の楽曲群の幾つかに共通して現れる存在です。明らかに、"夏"そして"君"のメタファーとして機能しています。アルバムの最後を締めくくるのもピアノインストです。タイトルからしてn-bunaさんの性癖がモロに出ていて、はじめクロスフェードを見たとき少し笑ってしまいました。歴代のアルバム中盤に入るインストを挙げると、『カーテンコールが止む前に』の「夕立」、『花と水飴、最終電車』の「夜祭前に」、『月を歩いている』の「落下」、『夏草』の「飛行」と似たような役割を果たしていると言えるでしょう。発売前に動画サイトに投稿していた曲。このアルバムでは後の「準透明少年」に次ぐ第二弾として投稿されました。これ、正直かなり賛否両論だと思います。「めっちゃカッコいい!」と感じるか、「流石にこれはダサい…邪魔」となるか。今のところ自分は後者寄りですが、聴き込んでいく中で慣れてくるかもしれません。それにしても、このようなふわふわと揺蕩う曲調はタイトルの「冬眠」を表しているのでしょうか。眠りに落ちる間際のまどろみ、または眠っているあいだに見る儚い夢。昨晩のツイキャスで、n-bunaさんはこの曲を「夏のことを考えながら作っていた」と言っていました。冗談のようですが、よく考えれば「夏に想いを馳せて眠る」というのはn-bunaさんが好きそうな行動です。そしてAメロ・Bメロも個人的には完璧と言いたくなる出来です。Aメロではイントロの高揚感をそのままに、うまく歌が乗っています。この曲ではsuisさんは大人に寄せた歌い方を採用していますが、もちろん最適解だと思います。ちなみに『夏草が邪魔をする』の感想はおよそ1年前に書いているので、よかったらこちらも読んでもらえると嬉しいです。